circle symphony

[女独白] 公園

私は手袋をしなかった

それは、

自分の手のひらが好きだから

そして、

特別に見えて欲しくないから

無理をしないこと

ひっそりと時を過ごすこと

それでも、これは

私の日常だった

精一杯の人生だった

[男女] 過去、夜の自転車散歩

男「オ オ ケストラ」

女「え?」

男「オーケストラ」

女「おーけすとら?」

男「うん、オーケストラ」

女「どうやって?」

男「だから… 人集め」

女「ふーん、でも大変そう」

 「っていうか無理」

男「うん」

 「みんなでジャジャーン!ってさ」

女「ジャジャーン!!」

男女笑い

男「みんなで音楽やりたいなぁ」

女「やりたいね…」

 「わぁ! ってね」

(車、ヘッドライト、転倒している二人、フェードアウト)

[男独白] 部屋

もう、2年以上も前のことだ

僕の状況はずっと止まったままで

それとは逆に

世界は急速に変化をしているようだった

急がないといけない

そう思った時もあったけれど

結局 僕は、僕のことで

力を使い果たしていたんだ

[男独白] 女の移動

彼女は、思った以上に落ち込んでいった

[男独白] 部屋

笑うことも無くなり

[男独白] 男と女の過去

最後には、

今の僕と同じように

彼女のその苦しみは、彼女だけのものになった

(沈黙)

男「そうだよね?」

[女独白] 駅、電車、道

うん、私はどうしても

自分の体と

あなたの気持ちを

受け入れることができなかった

[女独白] 部屋の前(インターフォンを押せず、うつむく、手紙を書く)

こうなってみないと

実感できないことはいっぱいあって

それは、想像以上にリアルでなまめかしいものだった

(沈黙、部屋 うつむいている男、吸殻)

[女独白] 街

でもね、このままではいけないと思うの

地面が近くなったせいか

自分が小さくなったせいか

それは、わからないけど

今では色んなことを考えられるようになりました

[女独白] 部屋 男は手紙を見つける

自分の心を人に伝えるのは、とても怖いことだとわかっています

でも、

[女独白] 街、陸橋の下

少しずつだけど

本当に少しずつではあるけれど

この私でも

[女独白] 部屋 男は鍵盤を持つ

人々に伝えなければならないことがあるんだと思います

[男女] 黒、シンクロ

男「声を」

女「声を」

男女「出さなければいけない」

[女] 街 街の人々、女、人々、鍵盤の上に指を置く男

女「すみません この上までお願いできますか?」

(黒落ち、街の音、フェードイン)

[ラストシーン] 街

女は陸橋の上、女の指、女の顔、男の顔、男の鍵盤にある指(ド)、女の指(レミ)

女の表情

END 200210030442 Awashima Kenrou

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